クラウドか、オンプレミスか。企業AIは「使い分け」へ — AI生成の概念イメージ。実際の製品構成・標準機能・導入実績を示すものではありません。

COLUMN / 第1回

クラウドか、オンプレミスか。企業AIは「使い分け」へ

AIを使いたい。でも、社内情報をどこまで入力してよいか分からない。その迷いを社員だけに背負わせず、情報と業務に応じて処理先を選ぶ仕組みを考えます。

生成AIの導入が止まるのは、モデル選びだけが原因ではない

提案書の下書き、社内規程の検索、契約書の要約。企業で生成AIを使いたい場面は数多くあります。しかし、使いやすいサービスを用意しただけでは、業務での利用は定着しません。「取引先の名前を入れてもよいのか」「この資料は社外秘ではないか」と迷うたびに、作業が止まってしまうからです。

一方、利用を全面的に禁止すれば、現場が必要な支援を得られず、会社が把握できない個人アカウントなどへ流れる可能性もあります。導入を考える際は、AIの回答性能と同じように、社員が迷わず使えるルールと経路を整えることが大切です。

本連載では、クラウドAIと企業が管理するAI基盤を組み合わせる「ハイブリッドプライベートAI」を、構想から運用まで順に解説します。IMMERSIAを使う構成も紹介しますが、掲載する構成や用途は検討例です。特定の機器を置くだけで、ここで述べる機能がすべて実現するわけではありません。

情報区分と処理先の使い分けを検討するオフィスシーンのイメージ(AI生成の概念イメージ。実際の製品構成・標準機能・導入実績を示すものではありません)
情報区分と処理先の使い分けを検討するイメージ。AI生成の概念イメージです。実際の製品構成・標準機能・導入実績を示すものではありません。

クラウドとオンプレミスには、それぞれの役割がある

クラウドAIは、外部のサービスとして提供されるAIを利用する形です。オンプレミスは、自社施設など、自ら管理する環境でシステムを動かす形です。モデルや用途によって、必要な設備、利用条件、運用負担は変わります。

公開情報を使った一般的な文章の整理や、外部送信が承認されたデータの処理には、クラウドAIが候補になります。ただし、企業向け契約と個人向けサービスを同じ条件として扱ってはいけません。データの保存、学習への利用、処理地域、削除、管理機能などを、利用するサービスと契約ごとに確認します。

社外へ送らない方針の情報や、社内システムとの密接な連携が必要な処理には、オンプレミスのAIが候補になります。一方で、更新、監視、バックアップ、脆弱性対応を誰が担うかまで設計する必要があります。クラウドだから危険、社内だから安全という単純な区分では、実際のリスクを見落としてしまいます。

同じ画面から、情報に応じて処理先を選ぶ

ハイブリッド構成の狙いは、社員が同じ入口からAIを使い、その裏側で会社の方針に沿って処理先を切り替えることです。例えば、公開済みの製品情報を整理する依頼と、未公開の価格表を含む提案書の作成では、許可できる処理先が異なります。

構成例では、統一したAIワークスペースの後ろに、情報の区分と利用権限を確認する層を置きます。外部送信を許可した情報は承認済みのクラウド接続へ、社内で扱う情報は社内AIへ振り分けます。判断できない内容は保留し、担当者に確認する経路も必要です。

ここで重要なのは、AIによる分類結果だけを唯一の判断材料にしないことです。文書の管理区分、利用者の所属、契約上の制約、宛先の許可リストなども組み合わせます。「一般的な質問」に見えても、添付資料や会話履歴に機密情報が混ざっていれば、全体として見直す必要があります。

同じAI画面を使いながら処理先を切り替えるワークスペースのイメージ(AI生成の概念イメージ。実際の製品構成・標準機能・導入実績を示すものではありません)
同じAI画面から処理先を切り替えるワークスペースの構想イメージ。AI生成の概念イメージです。実際の製品構成・標準機能・導入実績を示すものではありません。

クラウドAI

公開情報の整理・承認済みデータの処理。契約条件・処理地域・学習利用を確認する。

社内AI(オンプレ)

社外送信しない情報・社内システム連携。更新・監視・脆弱性対応の設計が必要。

ハイブリッド構成

同じ入口から処理先を自動振り分け。AIの分類だけに依存せず複数の条件を組み合わせる。

機密情報は社内AI、送信を許可した情報は承認済みの外部接続へ。不明な場合は保留する構成例。実際の動作は設計・実装・運用によって異なります。

最初に整理するのは、情報と業務の組み合わせ

最初から会社全体を対象にするより、具体的な業務を一つ選ぶと設計しやすくなります。営業部門であれば、公開資料の要約、社内価格表の参照、顧客向け提案書の下書きを別々の作業として整理します。

そのうえで「誰が使うか」「何を参照するか」「回答を誰に渡すか」「外部へ送ってよい範囲はどこか」を確認します。同じ文書でも、担当者が読むことと、外部サービスへ渡すことは別の判断です。閲覧できるから送信してよい、とは限りません。

見落としやすいのが、回答の利用先です。社内だけで作った要約でも、そのまま顧客へ送れば情報が外に出ます。入力時の制御だけでなく、回答の確認や共有方法も業務の流れに含めます。情報の入口から利用後までを見ることで、AIの導入が単なるツール追加から運用設計へ進みます。

液浸冷却は、社内AIを置くための設備側の選択肢

社内でAIを動かす場合、計算機だけでなく、電源、発熱、設置場所、騒音、保守動線などの確認が必要です。IMMERSIAの液浸冷却は、電子機器を適合する冷却液に浸して熱を取り除く方式で、こうした計算基盤の設置を検討するための選択肢です。

ただし、液浸冷却そのものに、情報の分類や外部送信を防止する機能はありません。情報保護は、ネットワーク、認証、ソフトウェア、権限管理、運用を組み合わせて実現します。また、装置から出る熱の扱いや設置条件は機種・構成・現場によって確認が必要です。

この区別を明確にすると、相談すべき相手も見えてきます。業務側は使いたい情報と作業を整理し、情報システム側はアクセスや経路を設計し、設備側は電源・冷却・保守を確認する。三者が同じ構想を共有して進めることが、無理のない導入につながります。

業務・情報システム・設備を一緒に設計する。液浸冷却は、このうち計算設備を支える技術です。

混在する情報は、作業を分けて考える

営業担当者が、公開カタログと社内の値引き条件を合わせて提案書を作るとします。二つの資料をまとめて外部AIへ渡してよいかは、最も重要な情報の扱いに左右されます。公開情報が大半だからという理由で、残りの機密情報まで同じ経路へ送ることはできません。

一つの方法は、公開情報だけの説明文を作る作業と、個別条件を反映する作業を分けることです。ただし、分けた後に作った文章にも機密が残る場合があります。加工したら自由に使えると考えず、最終的な出力をどこへ渡すかまで確認します。

社内AIを使う場合も、外部接続が一切ないとは限りません。更新、監視、ライセンス確認などの通信が必要な構成もあります。業務データを流す経路と、管理のための通信を分けて把握しておくと、「社内で処理する」という説明の範囲が明確になります。

検討の初期には、情報の種類、利用部門、参照するシステム、外部送信の可否、確認担当者を一枚の表にすると有効です。曖昧な欄は無理に埋めず、保留事項として残します。実装より先に判断すべきことが見え、PoCで検証する対象も絞れます。

もう一つ、処理を社内に残すことと、データをすべて複製することは別です。元の業務システムを参照する方法もあれば、必要な範囲だけを検索用に整備する方法もあります。複製する場合は、更新や削除がいつ反映されるかを決め、古い文書が回答の根拠になり続けないようにします。

導入の出発点は「何を社内に残すか」

ハイブリッドAIは、どの企業にも同じ構成を当てはめるための言葉ではありません。まず守る情報と業務の目的を決め、その条件を満たす組み合わせを考える方法です。すべてをオンプレミスへ移す必要も、すべてをクラウドへ送る必要もありません。

次の打ち合わせでは、実際に扱う文書を三つほど選び、外部送信できる範囲と確認責任者を整理してみてください。その小さな整理が、構成や費用を検討する具体的な材料になります。次回は、この方針を実際の送信制御やアクセス管理へ落とし込む方法を解説します。

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